感想

TRPGやゲーム等のネタバレ感想のまとめ

No.284

#虫を喰わせと蟲が哭く #SS
懐かしいので虫蟲PC2の回想をペタッ

 目の前で無防備に晒された白く細い首を折ることができたならば。
彩刃輝と名乗る土蜘蛛の侍従にされたあの日からそう歯噛みしない日はなかった。

この土蜘蛛さえ殺してしまえば『蟲喰いの儀』は成立しなくなる。
次代の『女王』を選出できなければこの里は勝手に自滅するだろう。
比良坂機関の者としてやらねばならないことだというのに。

侮蔑の言葉すら吐けず、無防備な首をただ見守るしかない“蟲”の身であることがどれほど屈辱的だったか。

洗脳さえなければ、『ユメモリ』さえ手に入れば、こんな土蜘蛛一匹ごとき。

『死ぬ事しか望まれていないので!』

肯定の言葉の代わりに慰めの言葉を吐く己の口に腸が煮えくり返りそうだった。

目の前で無邪気に笑みはしゃぐ姿に、一日でも長くこの日々が続けばいいと願わない日もまたなかった。

『女王』になれば彼女を害す存在はいなくなる。
出来損ないだと蔑んだ蟲共に復讐することも、善政をしいて尊敬を集めることも、彼女の望むまま生きることができるだろう。

本当は、ただ健やかでいてくれればそれでいい。ただこの空の下で笑っていてさえくれれば、それで。

その想いは以前にも抱いた気がするのだが、曖昧なまま記憶の底へと消えていく。

『死ぬ事しか望まれていないので!』

彼女にそう笑って言わせた土蜘蛛共に腸が煮えくり返りそうだった。

彩刃輝という土蜘蛛に向ける矛盾した感情。

――理解しているのなら、一日でも早く死んでくれ。

――僕は望んでいない。だからそんなことを笑いながら言ってくれるな。

目の前のちっぽけな少女に湧き出る情念すら振り払えない僕自身が何よりも腹立たしかった。

なんてことはない。
生を祈ったこの心は、哀れな土蜘蛛自身が植え付けたものだったのだから。

ハグレモノのわりに腕の立つ、昔馴染みの女だった。

僕は彼女の腕を見込んで忍務を言い渡し、彼女は僕の期待通りに忍務をこなして帰ってくる。
それだけの関係だ。

……笑う彼女を見ると不思議と肩の力が抜けた、そんな理由もあって依頼をしていたのかもしれないが、実際どうだったかは遠い記憶の中でもう覚えていない。

奇妙な風習のある土蜘蛛の里への潜入捜査を依頼した記憶ももはや曖昧だ。

たしか忍務に向かう前に話があると彼女は言った。僕は他の案件があるので帰ってからにしろ、と答えた覚えがある。

わかった、と返事した彼女がどんな表情を浮かべていたのか、書類から目を離さなかった僕は知らない。

そうして数日か数週間過ぎた頃、彼女の使役していた忍獣だけが帰ってきた。

「女王候補の蟲である彩刃輝に喰われた」と、最悪の知らせだけを抱えて。

馬鹿馬鹿しい。なんて馬鹿馬鹿しい話だろう。

よりにもよって彼女を喰らった蟲に奉仕し、そのうえ彼女といた時と同じ心地を味わっていたなど。

洗脳を受けていた身とはいえ、こんなことがありえていいはずがない。

一度殺すだけでこの燃える憎悪を消せるものか。

愛する者を殺し、誰からも愛されることのないまま、生きたまま地獄の業火に灼かれればいい。

そうでなければ彼女の無念は晴れない。
そうでなければ僕の心は……――。

だからもう、僕の心に居座ってくれるな。

生きてさえいてくれれば、と願わせるな。

僕の心から、1日でも早く消えてくれ。

『私は・・・・・』

『死ぬ事しか望まれていないので!』

そう笑う彩刃輝に苛立ったこの心は、一体誰のものか。畳む

1481文字, TRPG

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